FAQ 就業規則
- 就業規則
就業規則の法的な性質はどのように位置づけられますか。
就業規則とは、労働者の就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目を定めた規則類の総称であるとされています。就業規則の労働契約に対する効力については、平成19(2007)年に制定され、平成20(2008)年3月から施行された労働契約法(以下、労契法という)において、「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。」(第7条)と定められていることから、①労働契約を締結する場合に、②就業規則が合理的な労働条件を定めており、③当該就業規則が周知されている場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によることとなりました。
しかし、労契法が制定される以前は、就業規則の労働契約に対する効力についての規定が定められていなかったため、就業規則の効力をめぐっては学説上様々な見解が示されていました。
代表的なものとして、法規範説と契約説があります。
法規範説は、就業規則は、一種の法規範として当該事業場内の労働者を拘束するものとであるとする説です。
一方、契約説は、労働者が就業規則の定めるところに法的に従わなければならないのは、雇入れに当たり、その規則に同意を与え、そこに契約が成立したからだとする説です。これらの説の中でもさらに細かく見解が分かれているようですが、その点は専門書に委ねることとします。
このような学説上の見解が様々であった中、最高裁は次のように判示しました。
すなわち、就業規則の法的性質について、「労働条件は、経営上の要請に基づき、統一的かつ画一的に決定され、労働者は、経営主体が定める契約内容の定型に従って、附従的に契約を締結せざるを得ない立場に立たされるのが実情であり、この労働条件を定型的に定めた就業規則は、一種の社会的規範としての性質を有するだけでなく、それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、経営主体と労働者との間の労働条件は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められるに至っている(民法92条参照)ものということができ…、当該事業場の労働者は、就業規則の存在および内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然に、その適用を受けるものというべきである。」と判示しました(最大判昭43.12.25民集22巻13号3459頁)。
その後も、就業規則の法的性質やその効力が問題となった判例(最一小判昭61.3.13労判470号6頁、最一小判平3.11.28民集45巻8号1270頁、最二小判平9.2.28民集51巻2号705頁、最二小判平15.10.10労判861号5頁等)が積み重ねられたわけですが、それを経て就業規則と労働契約との法的関係について現在の労契法第7条に規定されるに至ったというわけです。
したがって、現在は、労契法第7条の規定が根拠となって、就業規則で定める労働条件が労働契約の内容を補充し「労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件による」という法的効果が生じるものとなっています。
【参考資料】
厚生労働省労働基準局編『令和3年度版 労働基準法 下巻(労働法コンメンタールNo.3)』971頁~985頁
菅野和夫『労働法(第12版)』(弘文堂,2019)202頁~204頁
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