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FAQ 採用

2022.05.26
  • 採用

労働契約はどのような要件を満たせば成立するものなのでしょうか。

労契法第6条は、労働契約の成立について「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。」と規定しています。同条の「使用されて労働」することとは、「労働に従事する」(民法623条)と同義であり、また、「賃金を支払うこと」とは「これ」(労働に従事すること)に対する「報酬を支払うこと」(民法623条)や、「労働の対償」としての「賃金を支払」うこと(労基法第9条・11条)と同義であるとされています。
すなわち、労働契約の成立に必要な合意は、当該労働者が当該使用者の指揮命令に従って労働に従事し、当該使用者が当該労働者に対して当該労働に対する報酬を支払うという合意にほかなりません。
この合意は、抽象的な内容でも足り、労働の種類・内容や賃金の額・計算方法に関する具体的な内容であることを必須としていません。また、契約書の作成などの要式は必要とされておらず、口頭によるものでもよいとされています。さらに、明示のものであることも必須としておらず、当事者の態度などの客観的事実から明確に認定できる黙示の合意の可能性も排除していません。
しかし、実際には、労働契約の締結に際して、労働者がおおよそどのような種類・内容の労働に従事し、使用者がこれに対してどの程度の額の賃金を支払うかが明らかにされていることが多く、それらの合意がなければ労働契約に至らないのが一般的でしょう。
労働契約の基本原則の1つに、「労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。」という合意の原則(労契法第3条第1項)がありますが、一般的に労働契約は、当事者間に情報の質や量、交渉力の格差などがあることから対等な立場において労働条件が決定されないおそれがあります。そのため、労契法は、労働契約の内容について使用者が労働者の理解を深めるべきであり、できるだけ書面で確認されるべき旨を規定し(労契法第4条)、また、労基法などが、使用者に対して、一定の労働条件について書面等による明示義務(以下、※1と※2ページ参照)を課しているのです(労基法第15条、パート・有期法第6条、労働者派遣法第34条第1項、職安法第5条の3第2項)。

※1 労働者を募集する際の労働条件の明示についてはどのようなルールがありますか。
※2 労働契約締結時の労働条件の明示についてはどのようなルールがありますか。

【参考資料】
菅野和夫『労働法(第12版)』(弘文堂,2019)150頁~154頁

※回答内容は、掲載日時点の法令・通達等に基づいたものです。

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